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活動型1 子どもとつむぐ物語:遠足から始まった電車遊び
画一的な年間カリキュラムにとらわれず、遊びや生活を通して
子どもたちと一緒につくる保育を実践したいと考えているみなさんへ

キーワード
#幼児・未就学児
#読み聞かせ・歌
#JHL/JFL/母語話者混合クラス
#保育ドキュメンテーション
#子どもと一緒につくる活動

教材1分紹介
本実践は、インターナショナル
幼稚園で
行っている「
日本語のじかん」に、
子どもたちと
一緒につくった
活動です。
本園では、1
日のほとんどの
保育を
英語で
行っていますが、どこの
国から
来た
子どもでも、
安心して
仲良く
過ごせるように、「
日本語のじかん」と「スペイン
語のじかん」も
設けています。
子どもたちの
頭の
中では「
日本語で
聞いたこと」「
生活言語で
考えたこと」「
家でしたこと」「
友だちと
遊んだこと」といった
経験が
分けられることなく、すべての
世界がつながっています。
幼稚園と
家庭も、
子どもたちにとっては、ひとつづきの
学びの
場です。そこで、
私たちは
子どもたちの
経験や興味・関心、疑問などを大切に拾い上げ、子どもたちの生きる世界の延長線上に新しい体験の物語をつむぐように活動をデザインしています。
今回紹介する
実践は、
遠足の
経験から
始まりました。ある
日、
遠足で
訪れた
公園で、
子どもたちは
古い
線路を
見つけ、
列になって
歩くことを
楽しみました。その
後、
園庭では
電車ごっこの
遊びが
始まり、
自然と
広がっていきました。
私たちは、
子どもたちの
遊びの
中から
自然に
生まれた
電車ごっこ
遊びを、
教室の「
日本語のじかん」の
活動へとつなげていきました。
また、
本園では、
子どもたちが
園で
見せてくれた
興味・
関心、
感動や
疑問を
保育ドキュメンテーション
としてまとめ、
毎週保護者の
方と
共有しています。
保育ドキュメンテーションは、
子ども
一人ひとりが
幼稚園で
生きている
世界を
家庭と
共有するためのツールです。
幼児期の
子どもたちは、「
言葉を
正しくリピートできたか」「
元気に
歌が
歌えたか」といった
従順さや
素直さで
評価されることがありますが、「できる」「できない」にかかわらず、
歌や
遊びを
通して
体を
動かし、
仲間と
関わりあいながら
学び
合い、
成長していきます。
私たちは子どもたちができたこともやらなかったことも「それでいい」と、子どもたちのありのままの姿として受け止めています。教室の
中で
見られなかった
姿が、
経験や
感動とつながり、
家庭でふと
大きな
一歩を
踏み
出すこともあります。
本実践では、
遠足での
経験から
生まれた
遊びを
出発点に、
日本語を
媒介として
体験を
深め、
子どもたちとともに
活動をつくっていく
過程を
紹介しています。
実際の
■保育ドキュメンテーション例
と
合わせてお
読みください。
この教材の特徴は?
• 子どもと一緒につくる活動
まだ小さい子どもたちも「これをやってみたい」「やりたくない」「もっと知りたい」といった思いを、しっかりと持っています。私たちは子どもたちの興味・関心や、ときに見られる困り感を受け止めながら、その延長線上に新しい経験や体験を重ねていくことを大切にしています。そのため、年間の詳細なスケジュールはあらかじめ立てていません。今回の実践も、遠足での経験を出発点として生まれた活動です。
• さまざまな言語環境にいる子どもたちが一緒に学ぶ
本園では、日本語を母語とする子ども、日本につながる子ども(継承語/JHL:Japanese as a Heritage Language)、日本語を外国語として学ぶ子ども(JFL:Japanese as a Foreign Language)が、同じ場で一緒に活動しています。子どもたちはお互いを真似することが大好きで、日本語を母語とする子どものおもしろい発言をみんなで繰り返して楽しむ姿も見られます。遊びを通して言語に触れる体験型の活動であるため、絵本や歌の長さ、活動の中で使う語彙や表現の数を調整することで、日本語の習熟度にかかわらず活用することができます。異年齢の集団や、家庭での活動でも行えます。
• 日本語を「媒介」とした活動
絵本や童謡、行事などの文化的な題材を通して日本語と出合い、保育者と子どもたちが共に関わる中で、遊びが広がっていきます。その中で、子どもたちは夢中になりながら学びを深めていきます。これまで、サンドイッチづくりや雨季、トイレトレーニングなど、身近なテーマをもとに活動を行ってきました。私たちは、日本語を「教える」こと自体を目的にするのではなく、日本語を媒介としてさまざまな体験を重ね、その中で日本語も、それ以外の力も育っていくことを大切にしています。一人ひとりの人間形成を見つめながら、成長していく姿に寄り添う活動です。このような活動は、幼稚園に限らず、家庭でも、特別な準備がなくても始めることができます。
どんな子ども?
| 年齢 |
3歳から4歳の幼児 (→1歳から小学生まで可) |
| 人数 |
2人以上 |
| 経験・知識 |
活動に必須の経験や知識は特になし |
| 日本語力の目安 |
- 特になし。日本語力は問わない
- ※実際の実践は、日本語が第1言語の幼児、第2言語・家庭内言語の幼児、外国語である幼児の混合クラスで実施
|
目標は?
| 目的 |
子どもたちが他者とのかかわりを通して、思いやりや協力しあう力を育む (子どもたちの社会性を育む) |
| 目標 |
- 仲間を思いやり、順番を守ったり、安全に気をつけながら、電車ごっこをみんなで楽しむ
- 友だちと関わりながら、役割を分担したり協力したりして遊ぶ
|
言語面の 目標 |
- 電車に関係する日本語の語彙やオノマトペに触れる。繰り返したり使ってみたりしてもよい
- 自分の使える言語を用いて、電車に乗ったり、見たりした経験を共有したり、電車ごっこを楽しむためのアイデアを言ったりする
|
主な活動と時間のめやす
時間:30
分×3コマ(
色々な
時間、
長さで
実施可)
活動:
①
絵本の読み聞かせ
電車に
関連する
絵本を
読み
聞かせ、
電車に
乗ったり
見たりした
経験を
思い
出せるようにする。
②
歌う・電車ごっこ
- 教室で「線路は続くよ どこまでも」を歌いながら電車ごっこ遊びを楽しむ。歌が一回終わるごとに車掌役を交代し、車掌になった子どもは自己紹介をする。
③
駅に名前をつける
子どもたちが
自由に
駅の
名前を
考えたり、
絵を
描いたりしながら、
電車ごっこを
広げる。
④
ふりかえり・共有
最初に
読んだ
絵本をもう
一度読み
聞かせ、②〜③で
感じた
楽しかった
気持ちをみんなで
共有する。
※このほか、
年齢の
異なる
子ども(2
歳児、4〜5
歳児、
小学生、
全年齢)を
対象にした
実践のバリエーションの
例も
記載しています。
詳しいプランはこちら(■教案)

をご覧ください。
子どもたちの学びの記録の残し方
保育ドキュメンテーションの導入
保育ドキュメンテーションとは、子どもたちの感動や発見、気持ちの動きを、写真や会話、つぶやきなどを通して記録し、目に見える形にしたものです。楽しい体験とことばが結びついた記録からは、日本語の力もそれ以外の成長も感じ取ることができます。子どもたちにとって、幼稚園と家庭はひとつづきの学びの場です。子どもたちの頭の中では「日本語で聞いたこと」「生活言語で考えたこと」「家でしたこと」「友だちと遊んだこと」といった区別はなく、すべての世界がつながっています。そこで、私たちは、子どもたちが幼稚園で生きている世界を家庭と共有するために、保育ドキュメンテーションを作成しています。この実践では「必ず〜してほしい」といった宿題は出していません。ドキュメンテーションという形で子どもの育ちを伝えながら、それぞれの家庭で、その子に合った関わり方を見つけてもらいたいと考えています。 もう少し詳しい情報を
■保育ドキュメンテーション例
に記していますので、ご参考ください。
こんな子どもの姿が見られました!
子どもたちからは、次のような声や姿が見られました。
● 電車ごっこの中で、まわりの友だちのことを考えたり、自分の行動を調整したりする姿
- 「(Tくんが車掌さんだって先生が言っていたけど)ぼくが一番に歩きたい」
- 「(大好きな電車みたいに)速く走りたいけど、お友だちに『ダメだよ』って言われた」
● 教室で歌った「線路は続くよどこまでも」を、それぞれのかたちで楽しむ姿
- 「(自分では歌えないけれど先生が)歌ってくれてうれしい」
- 「(日本語の歌って)楽しい。お家で聞けるかな?先生、お歌の名前をメールしといてね」
● 活動への興味・関心が高まり、日本語を使ってみたことで自信が育っている姿
- 「大きな声で自己紹介をするのは恥ずかしいけど、車掌さんになって帽子をかぶってみたい」
- 「(駅に描いてある絵を見てネコだとわかった。)大きな声で言ってみたら、先生が『ねこ』って書いてくれた(ぼくってすごい !)」
● 自由遊びの時間に見られた姿
- 実践後の自由遊びの時間にも、園内にあるさまざまなおもちゃ(サッカー用のミニゴールや縄跳びを持ったり、かごを頭にかぶったり)を使いながら、「デンシャ、デンシャ」「ポッポー」と声に出し、一列になって歩く姿が見られました。先頭を交代しながら、電車ごっこ遊びを楽しんでいました。
実践者からひとこと
この実践を行った際、保護者の方から、「家の中を走り回っているから注意しようと思ったのですが、幼稚園で電車ごっこをしていることを思い出し、公園に移動して一緒に電車遊びをしました」という声をいただきました。その方は、子どもの行動だけを見るのではなく、その背景にある心の動きに目を向け、幼稚園で友だちと楽しんだ電車遊びの感動を、子どもなりに家庭で再現しようとしていたのだと受け止めてくださったのだと思います。
子どもたちは、
私たち
大人には
計りきれないほど
豊かな
世界を
生きています。そして、その
世界は
幼稚園だけで
完結するものではなく、
家庭ともひとつづきにつながっています。
保護者の
方に
子どもの
心の
動きを
伝えることで、
園と
家庭のあいだに
連携や
協働の
関係が
生まれます。
子どもへの
理解が
少しずつ
広がり、
深まり、
一人ひとりとどのように
向き
合っていくのかが
見えてくる――この
実践を
通して、
改めてその
大切さを
感じています。
この実践が生まれた背景
子どもたちとつくる活動に至るまで
9年前、インターナショナル幼稚園で「日本語のじかん」を持ち始めた当初、私は日本の文化や読み書きを教えることが一番大切だと思っていました。今振り返ると、日本語を母語とする自分が学んできたのと同じように学べば、子どもたちも日本語が上手になるに違いないという思い込みがあったのだと思います。また、幼児期にひらがなや日本のルールをしっかり教えておけば、小学校に行ってから楽になるのではないか、と考えていた部分もありました。しかし、活動に楽しそうに参加する子どもがいる一方で、退屈そうに受動的に過ごす子どもの姿にも気づくようになりました。そこで、子どもたちが受け身になってしまう一元的な活動を、すべてやめる決断をしました。
同じような思いをクラス担任も抱いていたことから、園全体で話し合いを重ね、3年ほどかけて段階的に年間カリキュラムを廃止しました。現在は、子どもたちの興味・関心や発達段階に合わせて、絵本や童謡、季節や行事などを手がかりに、話題別の活動を行いながら語彙や知識を広げています。日本語を母語とする子ども、日本につながる子ども(継承語)、日本語を外国語として学ぶ子どもが、同じ場で一緒に活動しています。日本語がどの程度話せるかよりも、日本語を媒介としてさまざまな体験をし、その中で一人ひとりが成長していく姿を見つめることを大切にしています。
また、開園から、「幼稚園と家庭はチーム」と信じ、家庭との対話を大切にしてきました。毎日、すべてのご家庭と十分に話すことは難しい中でも、子どもたちの育ちを見つめる中で感じた感動を、できるだけ多くの保護者の方と共有したいという思いから、週便りの作成を始めました。保育者(教師)が審判のように「〜ができた」「〜がよかった」と評価するのではなく、子どもたちのありのままの姿を「なんてすてき!」と受け止めてほしい。また、自分の子どもだけでなく、周りの友だちの魅力にも目を向けてほしい。そうした思いを形にする方法として、保育ドキュメンテーションにたどり着きました。活動中に撮影した写真に、子どもたちの会話やつぶやき、行動の様子を添えたシンプルなものですが、家庭で幼稚園での活動について話す機会が増えたり、活動について考えてきてくれる姿が見られたりと、大きな手応えを感じています。
作成者
平野梓
Kinder Internacional My Little Sunshine 園長