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教材型2 日本語力だけで決めない!日本語+αで「もっと知りたい」を揺さぶる
「言語面と内容面の両面が子どもたちにあう教材に出合えていない」と感じているみなさんに、
多言語の力を活かし子どもたちの知識欲を満たす学びを提案する教材

キーワード
#小学校高学年以上
#テーマの理解を拡げる・深める
#言語的資源をフル活用
#地域資源の活用

教材1分紹介
私たちの
教材は「
日本語の
漢字や
語彙レベルに
合わせた
教材だと、
内容が
浅いと
感じて
学習への
興味が
持てない」
「もっとやりがいのある内容を日本語で学びたい」という子どもたちの声から生まれました。日本につながる
子どもたちは、
日本語は
少し
苦手でも、
他の
得意な
言語では
高い
言語力や
思考力を
持っています。そのため、
年齢や発達に合った知識欲を満たす教材が
必要だと
考えています。
私たちの
教材では、
子どもたちが得意な言語や、他言語で学んだ知識をうまく利用しながら、
日本語を
学ぶ
過程で「
世界」や「
地域」について
多角的に考えられるテーマを
取り
上げています。また、
日本文化や
日本社会について
学ぶことで、
自分のルーツを
理解し、
肯定的なアイデンティティを
育むことを
目指しています。
「
言語面と
内容面の
両面が
子どもたちに
合う
教材に
出合えていない」とお
悩みの
教育現場の
方へ、
子どもたちの
知識欲を
満たし、
多言語の
力を
活かして
多様な
日本語力の
子どもたちが
学びあう
場を
創ることを
提案する
教材です。
この教材の特徴は?
• 内容の学習と言語学習を統合
マーシャルアーツ(空手やテコンドーなどの東洋の武芸)をテーマに、内容面の理解を深めながら、日本語も学びます。ここでは日本の「空手」「柔道」「なぎなた」といった伝統武道だけでなく、香港で親しまれる「カンフー」や、世界的に知られる「テコンドー」「カポエイラ」など、多文化的なテーマを扱い、興味を引き出します。日本語は教科として学ぶのではなく、トピックの内容を学ぶための手段として活用することで、実践的な言語スキルが身につきます。
• 学習者の持つ言語的資源を活用して、思考を深める
日本語以外の得意な言語(英語、中国語など)で調べたり考えたりしたことを、日本語で発表する活動を通じて、他言語で得た知識や視点を日本語学習に活かします。マルチリンガルな子どもたちの強みを活かし、学習者が既に持っている言語的資源を積極的に活用することで、学びの深さと効率を高めます。
• 多角的視野を育む
多角的な視野を育むための工夫が多数あります。
(1)トピックの考察:
日本、
香港、
世界の
武道や
格闘技について
比較し、それぞれの
文化的背景や
特徴、
社会的な
役割を
分析することで、
深い
理解と
批判的な
視点を
養います。このように
日本文化にとどまらず、
学習者が
暮らす
地域(
香港)や
世界の
文化を
取り
入れることで、
多角的な
思考を
促進します。
(2)多角的な情報収集:インタビューやグループディスカッション、
調べ
学習を
通じて
得た
情報を
整理し、
自分の
意見や
考えを
形成する
力を
育てます。
• 地域資源を活用して、実社会に根ざしたコミュニケーションの場を創る
テーマに関連する分野で活躍するゲスト講師(地域の武道家、カンフーの指導者など)を招き、インタビュー活動を行うことで、学習者にとって実践的な日本語使用の機会を提供します。これは同時に、地域やコミュニティの人に目を向ける機会にもなります。
どんな子ども?
| 年齢 |
小学校高学年以上 |
| 人数 |
13人(何人でも) |
| 経験・知識 |
平日に通う現地校やインターナショナルスクールで、日本語以外の学習言語で様々なトピックについて学んでいる。 |
| 日本語力の目安 |
様々な支援(得意な言語の使用、ペアやグループでの協働など)があれば、小学5年生の国語教科書の内容がだいたい理解できるレベル
※リライトによって、読解教材の語彙や難易度を変えることで、もうすこし下の学年からも使えるようにアレンジできます。
|
目標は?
| 目的 |
知的好奇心を刺激するテーマでの学習活動を通して、多角的視野を育てる |
| 目標 |
世界のマーシャルアーツを比較しながら、類似点や相違点を整理する。 また、その過程を通して、それぞれの⽂化的背景や特徴を理解し、考察する |
言語面の 目標 |
- 日本語以外の得意な言語(英語、中国語など)で調べたり考えたりしたことを、日本語で発表する
- 読解活動を通して、文脈の中で語句の意味や使い方を理解する
- パラグラフの構成を意識してアイデアをまとめ、読み手にわかりやすい短い文章を日本語で書く
|
主な活動と時間のめやす
【60分×8回】
1 マーシャルアーツについて(テーマの
導入)
2
世界のマーシャルアーツ(
読解、
内容理解、
語彙・
表現学習)
3
世界のマーシャルアーツ(ライティング)
4 マーシャルアーツを
紹介しよう(スピーチ
準備)
5 マーシャルアーツを
紹介しよう(スピーチとその
振り
返り)
6 マーシャルアーツの
達人にインタビュー(インタビュー
準備)
7 マーシャルアーツの
達人にインタビュー(インタビュー)
8 マーシャルアーツの
達人にインタビュー(ライティング+ふりかえり)
詳しいプランはこちら(■教案)
子どもたちの学びの記録の残し方
教材
子どもたちは教材に書き込みながら学習を進めます。その教材を見返すことで子どもたちは学びの内容を振り返ることができます。
ライティングのポートフォリオ
自己評価のチェックリストやルーブリック(評価基準表)に沿って自分のライティングを見直したりクラスメイトや教師からフィードバックをもらったりした後、書き直しを行います。それをポートフォリオの形で保存し、自分のライティングがどのように変わってきたか振り返ることができます。
※ルーブリック(評価基準表)とは学習の成果やパフォーマンスを評価するための明確な基準を示した表です。簡単にいうと、どのような観点で、どのレベルまでできているかを判断するための「ものさし」です。これにより、評価の透明性が高まり、学習者と指導者の双方が「何を目指すのか」「どの程度できているのか」を共有できます。学習者は自分の強みや改善点を把握しやすくなります。また、指導者は具体的な基準に沿ってコメントできるので、改善につながる指導ができるようになります。
ふりかえり(自己評価表)
テーマの最後の授業で、そのテーマでの一連の学習を振り返ります。日本語や得意な言語で学びを言語化し、自分の成長を明確にし、学びを深めます。
こんな子どもの姿が見られました!
今回の
実践では、
日本語力が
様々な
学習者がテーマについて
日本語だけでなく
自分の
得意な
言語を
使いながら
自分自身の
考えを
深め、
日本語で
言語化し
発信しようとする
姿が
見られました。
「剣道の習い事をしています。その中でいつも指導される礼儀や精神について改めて日本語で考えたり表現したりする機会となり、楽しかったです。」(中学1年生のAさん)
Aさんは、普段、剣道の稽古で「礼に始まり礼に終わる」という教えを体験を通して自然に学んでいましたが、それを言葉にして表現する機会はこれまで多くなかったようです。自分の経験や考えを日本語で伝えることに楽しさを見出し、伝える力がさらに磨かれるきっかけとなったと感じています。最初は中国語や英語交じりだった意見発表が授業を重ねるにつれ、読解で学んだ語彙などを使って日本語でしっかりと伝えられるようになりました。
実践者からひとこと
今回の
実践では、
私たちは
改めて
子どもたちの
豊かな
言語資源をうまく
活用すれば、「
日本語オンリー」ではなかなかできない
複雑で
深いテーマについて
考察し、それを
日本語学習につなげることができることを
実感しました。
マーシャルアーツというテーマを通して子どもたちはただ知識を得るだけでなく、自分の考えを深め、それを日本語で表現する力を鍛えることができました。また、実際のインタビュー、話し合いや調べ学習などのワークを通じて、日本語が単なるコミュニケーション手段ではなく、豊かな考えや感情を伝えるツールであることを学んでくれたように感じます。
子どもたちが自分のことばで経験や考えを語り、それを通じて自らのアイデンティティや成長を実感している姿を見ると、日本につながる子どもへの日本語教育に携わる実践者としてこの上ない喜びを感じます。これからも、こうした学びの機会を大切にしながら、子どもたちの可能性を広げる実践を続けていきたいと思います。
この実践が生まれた背景
■実践を行っている地域(香港)の言語的な背景
香港では、広東語と英語が公式な言語として認められています。また、近年、標準中国語(普通話)の重要性も高まってきています。香港は多文化社会で、普段の会話では広東語や中国語(普通語)がよく使われますが、英語は仕事や国際的な場面で重要視されています。
香港の多くの家庭では広東語が主に話されていますが、英語や標準中国語(普通話)を使う家庭もあります。日本にルーツを持ち香港に暮らす子どもたちは、家庭で日本語を話すこともありますが、その頻度は家庭によって異なります。
香港の現地校では、広東語と英語が主に使われており、標準中国語(普通話)も教科として教えられています。インターナショナルスクールでは、英語とその他の言語(フランス語、ドイツ語、スペイン語など)が学習言語として用いられ、標準中国語(普通話)もカリキュラムに組み込まれている学校が多いです。
このように、香港の人々は、場面に応じて広東語、英語、標準中国語(普通話)を使い分けます。特に私たちが支援している日本につながる子どもたちも程度の差はあれ、英語・広東語・標準中国語(普通話)に加え、日本語を使って生活するマルチリンガルな学習者であると言えます。
■発達段階を考慮し、子どもたちが「学びたい」と思えるテーマで学べる教材のニーズ
私たちが実践を行う香港では、日本人学校、補習授業校など小学生を対象とした学習機会の選択肢は比較的多いですが、中学生以降になると選択肢も少なくなります。帰国を予定している生徒を対象とした私塾は、日本での入試を意識しない継承日本語学習者の学習ニーズには合いません。また、文法・語彙ベースで教える現地の人向けの日本語学校なども、すでにある程度の日本語が話せて聞ける継承日本語学習者の学習ニーズには合わず、いずれも難しさがあります。また、継承日本語学習者を対象にした私塾や家庭教師などでも、語彙や漢字の知識などを基準に、自分の学年よりも下の学年の教材を使うことがあり、そうするとテーマが幼稚すぎて興味がわかないといった不満が学習者の中にありました。
私たちは、この継承日本語学習者が「わくわく」「学びたい」と思うようなテーマで学べる教材がないという課題を解決したくて、教材づくりを開始しました。上述したように、私たちが支援する日本にルーツを持つ子どもたちはマルチリンガルな学習者です。その豊かな言語的資源を積極的に活用することで、「日本語オンリー」ではできない深い思考を言語化するプロセスを楽しめる教材をつくりました。
教材や授業をデザインし実施するにあたり、「食べ物」「服装」「生活様式」などの目に見える表層的な文化の側面を糸口にしながらも、「価値観」「考え方」「言葉の意味」「行動の意味」「アイデンティティ」のような見えない部分(背景となる要素)についても、子どもたちが思考したり表現したりするきっかけとなるような教材や授業を創ることを意識しています。そのアプローチが10代の子どもたちの発達段階を踏まえた、子どもたちの知識欲を満たす教材づくりにつながると考えるからです。
作成者
マルチリンガルな学習者のための継承日本語プロジェクト
明石智子(香港理工大学)
クレスプ由江(International College Hong Kong)