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活動(かつどう)型(がた)3 世代(せだい)を超(こ)えて皆(みな)が心地(ここち)よい場(ば)を創(つく)る: 作(つく)ろUdon・食(た)べよUdon

教師(きょうし)不足(ぶそく)や、多様(たよう)な学習(がくしゅう)者(しゃ)への対応(たいおう)に困(こま)っている方(かた)へ
世代(せだい)を超(こ)えて一人(ひとり)ひとりが心地(ここち)よく集(つど)える場(ば)を創(つく)ってみることを提案(ていあん)する教材(きょうざい)


動画

キーワード

#異(い)年齢(ねんれい)集団(しゅうだん)(幼児(ようじ)~90代(だい)まで) 


#多様(たよう)な学習(がくしゅう)者(しゃ)が関(かか)わり合(あ)う場(ば)


#おおらかにゆるやかに


#共(とも)に作(つく)り、共(とも)に食(た)べる


#「食文化(しょくぶんか)」する

動画

教材(きょうざい)1分(いっぷん)紹介(しょうかい)

「日本(にほん)につながる人(ひと)たちが、自(みずか)らを肯定(こうてい)し、幸(しあわ)せに生(い)きるために、日本語教育(にほんごきょういく)のできることは何(なん)だろう?」

実社会(じっしゃかい)では、世代(せだい)も年齢(ねんれい)も言語(げんご)レベルも認知(にんち)能力(のうりょく)もすべて違(ちが)う人々(ひとびと)が、触(ふ)れ合(あ)って共(とも)に生(い)きているのだから、「日本語(にほんご)を学(まな)ぶ場(ば)」も、そうあっていいのではと考(かんが)え、幼児(ようじ)から90代(だい)までが集(つど)う「異(い)年齢(ねんれい)クラス」を作(つく)りました。このクラスでは、日本文化(にほんぶんか)や日本食(にほんしょく)に親(した)しみながら、世代(せだい)を超(こ)えて学習者(がくしゅうしゃ)が学(まな)び合(あ)い、協働(きょうどう)し、コミュニティや地域(ちいき)とつながることで、「ほどよく心地(ここち)のいい場(ば)」を創(つく)ることを目指(めざ)し、活動(かつどう)しています。

今回(こんかい)ご紹介(しょうかい)する「作(つく)ろUdon・食(た)べよUdon」の活動(かつどう)はその一(いち)例(れい)です。心(こころ)も体(からだ)も温(あたた)まる「うどん」を、作(つく)り方(かた)から調(しら)べ、仲間(なかま)とワイワイがやがや手作(てづく)りして、地域(ちいき)のイベント「うどん会(かい)」などで一緒(いっしょ)に食(た)べます。また、それぞれの興味(きょうみ)関心(かんしん)に応(おう)じて、「うどん」に関連(かんれん)した書道(しょどう)や絵画(かいが)や川柳(せんりゅう)などの作品(さくひん)を味(あじ)わったり、作(つく)ったりといった自己(じこ)表現活動(ひょうげんかつどう)を行(おこな)ったりもします。このような経験(けいけん)は、心(こころ)も体(からだ)も満(み)たし、幸(しあわ)せな記憶(きおく)として、一人(ひとり)ひとりの人生(じんせい)を支(ささ)える糧(かて)となるのではないでしょうか。

この実践(じっせん)では、教師(きょうし)不足(ふそく)や、複数(ふくすう)レベルの多様(たよう)な学習(がくしゅう)者(しゃ)への対応(たいおう)に困(こま)っている方(かた)に、世代(せだい)を超(こ)えて一人(ひとり)ひとりが心地(ここち)よく集(つど)える場(ば)を創(つく)ってみることを提案(ていあん)します。安価(あんか)で簡単(かんたん)安全(あんぜん)な「うどん」を共(とも)に作(つく)って食(た)べる活動(かつどう)が、多様(たよう)な人(ひと)が関(かか)わり合(あ)う場(ば)づくりのヒントになればと思(おも)います。







内容(ないよう)

この教材(きょうざい)の特徴(とくちょう)は?

• 気軽(きがる)におおらかに、ゆるく。多様(たよう)な関(かか)わり方(かた)

+
うどん作(づく)りを通(とお)して、年齢(ねんれい)や立場(たちば)にかかわらず、それぞれが無理(むり)なく関(かか)われる「おおらかでゆるやかな場(ば)」を創(つく)っています。うどんは、材料(ざいりょう)が安価(あんか)で入手(にゅうしゅ)しやすく、工程(こうてい)も簡単(かんたん)で危険(きけん)が少(すく)ないため、年少(ねんしょう)者(しゃ)からご年配(ねんぱい)の方(かた)まで活動(かつどう)に参加(さんか)できます。自分(じぶん)の得意(とくい)なことをしたり、手伝(てつだ)ったり、手伝(てつだ)ってもらったりと、関(かか)わり方(かた)は人(ひと)それぞれです。「今日(きょう)は調子(ちょうし)が出(で)ない」という人(ひと)は、見(み)ているだけでも構(かま)いません。すべてを100%全力(ぜんりょく)で行(おこな)う必要(ひつよう)はなく、自由(じゆう)さや、何(なに)もしない人(ひと)も許容(きょよう)するゆるさを大切(たいせつ)にしています。学習者(がくしゅうしゃ)、保護者(ほごしゃ)、地域(ちいき)やコミュニティの人(ひと)が、それぞれの関(かか)わり方(かた)で、気楽(きらく)に継続的(けいぞくてき)に集(あつ)まることが、心(こころ)のよりどころとなる場(ば)づくりにつながっています。

• 「うどん」を題材(だいざい)に、できることは無限(むげん)

+
身近(みぢか)な「うどん」を題材(だいざい)にすることで、学(まな)びをさまざまな教科(きょうか)・表現活動(ひょうげんかつどう)へと広(ひろ)げることができます。「うどん」についてのインタビューなどの調(しら)べ学習(がくしゅう)を通(とお)して、グラフを作成(さくせい)したり、発表(はっぴょう)動画(どうが)を作(つく)ったりできます。レシピを見(み)て作(つく)り方(かた)を理解(りかい)し、分量(ぶんりょう)を計算(けいさん)できることも、立派(りっぱ)な力(ちから)です。さらに、栄養素(えいようそ)の学習(がくしゅう)など食育(しょくいく)につなげることもできます。「うどん」に関連(かんれん)したオノマトペや川柳(せんりゅう)、絵画(かいが)や書道(しょどう)などを通(とお)して、体験(たいけん)したことを表現(ひょうげん)する文化的(ぶんかてき)活動(かつどう)にも広(ひろ)げられます。特(とく)に、イベントで他者(たしゃ)の目(め)に触(ふ)れる作品(さくひん)を作(つく)ることは、学習者(がくしゅうしゃ)のモチベーションを高(たか)めることにもつながります。

• 教師(きょうし)不足(ぶそく)に対応(たいおう)できる

+
多様(たよう)な学習(がくしゅう)者(しゃ)が同(おな)じ空間(くうかん)で学(まな)び合(あ)うため、教師(きょうし)一人(ひとり)でも無理(むり)のない運営(うんえい)が可能(かのう)です。世代(せだい)や日本語(にほんご)レベルの異(こと)なる学習者(がくしゅうしゃ)が同(おな)じ時間(じかん)・同(おな)じ場所(ばしょ)で活動(かつどう)するため、教師(きょうし)がレベル別(べつ)に何(なん)時間(じかん)も授業(じゅぎょう)を行(おこな)う必要(ひつよう)がありません。学習者(がくしゅうしゃ)同士(どうし)の関(かか)わりや協働(きょうどう)そのものが学(まな)びとなり、教師(きょうし)は全体(ぜんたい)を見守(みまも)る役割(やくわり)を担(にな)います。

どんな子(こ)ども?


年齢(ねんれい) 4歳(さい)~90代(だい)成人(せいじん)(何(なん)歳(さい)でも)
人数(にんずう) 10名(めい)程度(ていど)(うどんを作(つく)るため、台所(だいどころ)の広(ひろ)さにもよるが、何人(なんにん)でも可能(かのう))
経験(けいけん)・知識(ちしき) 多様(たよう)(特(とく)に問(と)わない)
日本語(にほんご)力(りょく)の目安(めやす) A1レベルから、話(はな)す能力(のうりょく)はC2レベルまで多様(たよう)(特(とく)になし)

目標(もくひょう)は?


目的(もくてき) 日本文化(にほんぶんか)や日本食(にほんしょく)に親(した)しみながら、自分(じぶん)や他者(たしゃ)の多様(たよう)な考(かんが)え方(かた)を知(し)り、他者(たしゃ)との協働(きょうどう)や地域(ちいき)とのつながりを通(とお)して、主体的(しゅたいてき)に学(まな)び、関(かか)わる力(ちから)を育成(いくせい)する
目標(もくひょう)
  • うどん作(づく)りや書道(しょどう)、絵画(かいが)、川柳(せんりゅう)などの日本文化(にほんぶんか)に親(した)しむ
  • 日本食(にほんしょく)について、調(しら)べ、実際(じっさい)に作(つく)り、食(た)べ、片(かた)づけまでの一連(いちれん)の活動(かつどう)に主体的(しゅたいてき)に取(と)り組(く)む
  • 自分(じぶん)や家族(かぞく)の好(す)き/苦手(にがて)な食(た)べ物(もの)や得意(とくい)/不(ふ)得意(とくい)なことを知(し)り、認(みと)め合(あ)う
  • イベントの準備(じゅんび)や運営(うんえい)に関(かか)わりながら、地域(ちいき)の人々(ひとびと)との交流(こうりゅう)を通(つう)じて社会(しゃかい)とのつながりを感(かん)じる
言語(げんご)面(めん)の
目標(もくひょう)
  • 自分(じぶん)の興味(きょうみ)関心(かんしん)のある語彙(ごい)/表現(ひょうげん)を学(まな)ぶ
  • 他人(たにん)と意味(いみ)のあるやりとりをする
  • 「うどん会(かい)」での自分(じぶん)の学(まな)びや感想(かんそう)を話(はな)す/書(か)く
  • オノマトペと川柳(せんりゅう)・俳句(はいく)を味(あじ)わう/学(まな)ぶ

主(おも)な活動(かつどう)と時間(じかん)のめやす

対面(たいめん)授業(じゅぎょう)と、家(いえ)での学習(がくしゅう)を取(と)り入(い)れて行(おこな)っています。
クラスの実態(じったい)や様子(ようす)に応(おう)じて、さまざまな活動(かつどう)の組(く)み合(あ)わせが可能(かのう)です。以下(いか)はその一(いち)例(れい)です。

全(ぜん)4回(かい)(1回(かい)3時間(じかん)程度(ていど))+家(いえ)での学習(がくしゅう)
 【家(いえ)での学習(がくしゅう)】
  • うどんを食(た)べた経験(けいけん)についてアンケートを行(おこな)う。うどんの材料(ざいりょう)や作(つく)り方(かた)について調(しら)べる
 【第(だい)1回(かい)】うどんを作(つく)る・食(た)べる
  • 事前(じぜん)に調(しら)べたことをもとに、クラスで協力(きょうりょく)してうどんを作(つく)り、一緒(いっしょ)に食(た)べ、片(かた)づけまで行(おこな)う
 【第(だい)2回(かい)】ふり返(かえ)り+イベント準備(じゅんび)
  • うどん作(づく)りの活動(かつどう)をふり返(かえ)る。イベント「うどん会(かい)」に向(む)けた準備(じゅんび)を行(おこな)う
 【第(だい)3回(かい)】イベント実施(じっし)
  • 「うどん会(かい)」を実施(じっし)する。地域(ちいき)の人(ひと)などを招(まね)き、うどんを作(つく)って一緒(いっしょ)に食(た)べる
 【第(だい)4回(かい)】発展(はってん)的(てき)表現活動(ひょうげんかつどう)
  • うどんを題材(だいざい)に、日本文化(にほんぶんか)(書道(しょどう)、絵(え)、川柳(せんりゅう)など)に親(した)しむ
※所要時間(しょようじかん)はあくまで目安(めやす)です。特(とく)に「イベント実施(じっし)」は、イベントの規模(きぼ)によって異(こと)なります。

教案(きょうあん)では、この例(れい)以外(いがい)にも、全(ぜん)6回(かい)で行(おこな)う実践(じっせん)例(れい)など、実施(じっし)のバリエーション例(れい)を紹介(しょうかい)しています。
詳(くわ)しいプランはこちら ■教案(きょうあん) PDF

子(こ)どもたちの学(まな)びの記録(きろく)の残(のこ)し方(かた)

• 今日(きょう)のふり返(かえ)り

+

日々(ひび)の活動(かつどう)をふり返(かえ)りながら、自分自身(じぶんじしん)の小(ちい)さな変化(へんか)や気(き)づきに目(め)を向(む)ける時間(じかん)を大切(たいせつ)にしています。自分(じぶん)で自分(じぶん)の変化(へんか)や成長(せいちょう)が認(みと)められるように、ふり返(かえ)りシートに自由(じゆう)に、その日(ひ)に何(なに)を学(まな)んだのか、今日(きょう)の気(き)づきなど何(なに)でもいいので記録(きろく)しています。


• 成果(せいか)物(ぶつ)への自己評価(じこひょうか)

+

成果(せいか)物(ぶつ)への自己評価(じこひょうか)を通(とお)して、自分(じぶん)の良(よ)さに気(き)づくことを大切(たいせつ)にしています。書道(しょどう)や川柳(せんりゅう)などの表現活動(ひょうげんかつどう)の後(あと)には、自分(じぶん)の作品(さくひん)を自分(じぶん)なりの方法(ほうほう)で評価(ひょうか)するようにしています。評価(ひょうか)の方法(ほうほう)は、点数(てんすう)でも、絵文字(えもじ)マークでも、なんでも良(よ)いと考(かんが)えています。また、点数(てんすう)の上限(じょうげん)もありません。教師(きょうし)からは、自分(じぶん)のいいところに特(とく)に着目(ちゃくもく)するように、自分(じぶん)に甘(あま)くするように、他人(たにん)と比(くら)べる必要(ひつよう)はないことを常(つね)に伝(つた)えるようにしています。こうした自己評価(じこひょうか)の記録(きろく)は、教室(きょうしつ)のボードに掲示(けいじ)し、家族(かぞく)や周(まわ)りの人(ひと)にも、変化(へんか)や成長(せいちょう)が見(み)てもらえるようにしています。


• トピックごとのまとめの動画(どうが)

+

自分(じぶん)の学(まな)びを誰(だれ)かに伝(つた)えてみることで、気(き)づきが深(ふか)まることがあります。ふり返(かえ)りや自己評価(じこひょうか)、作品(さくひん)について話(はな)した内容(ないよう)を、短(みじか)い動画(どうが)として残(のこ)すこともあります。顔(かお)は映(うつ)さず、誰(だれ)かに説明(せつめい)するような気持(きも)ちで話(はな)します。動画(どうが)はグループ内(ない)で共有(きょうゆう)し、お互(たが)いの感(かん)じ方(かた)に触(ふ)れるきっかけになっています。

こんな子(こ)どもの姿(すがた)が見(み)られました!

• 年下(としした)の学習者(がくしゅうしゃ)の世話(せわ)を焼(や)くようになったAさん

+

末(すえ)っ子(こ)のAさんは、親(おや)や兄弟(きょうだい)、従妹(いとこ)の中(なか)での年下(としした)で、みんなから世話(せわ)を焼(や)かれて、甘(あま)える姿(すがた)が日常(にちじょう)の姿(すがた)。ですが、「うどん作(づく)り」では、いつもとは違(ちが)う姿(すがた)が見(み)られました。「小麦粉(こむぎこ)に水(みず)を入(い)れる」役(やく)を幼児(ようじ)にやってもらおうと考(かんが)えたAさんは、まず、椅子(いす)を持(も)ってきて、上(うえ)に立(た)たせました。水(みず)の入(はい)った容器(ようき)を手渡(てわた)して、その水(みず)をボールに入(い)れるように伝(つた)えて、自分(じぶん)はニコニコとボールを支(ささ)えていました。それができたら、きちんと「できたね!ありがとうね!」とほめることもできました。このように、小(ちい)さい子(こ)どものできることを探(さが)して、優(やさ)しくサポートをする姿(すがた)を見(み)ることができるのは、年齢(ねんれい)差(さ)があるこの実践(じっせん)ならではの姿(すがた)で、そんな姿(すがた)を見(み)たり、聞(き)いたりする親(おや)の笑顔(えがお)がまた、こちらを幸(しあわ)せな気持(きも)ちにさせてくれます。


• 普段(ふだん)したことのないことに挑戦(ちょうせん)するBさん

+

普段(ふだん)は、家(いえ)でマッチで火(ひ)をつけたことがなかったBさん。業務用(ぎょうむよう)の大(おお)きなガスコンロに火(ひ)をつけるのは、強(つよ)すぎる火力(かりょく)と、つけるときの大(おお)きな音(おと)のせいで、大人(おとな)でも少(すこ)し勇気(ゆうき)のいる行為(こうい)ですが、「やったことないけど、やってみたい」と言(い)い、ワーワー言(い)いながらも、恐々(こわごわ)とマッチを擦(こす)り、思(おも)い切(き)って手(て)を近(ちか)づけて火(ひ)をつける様子(ようす)が見(み)られました。皆(みな)と一緒(いっしょ)にいたらちょっと勇気(ゆうき)がでて、やってみたことのないことに挑戦(ちょうせん)する姿(すがた)、仲間(なかま)ができるのだから、自分(じぶん)もできると思(おも)い、挑戦(ちょうせん)する姿(すがた)はこの実践(じっせん)でよく見(み)られる光景(こうけい)です。


• 自分(じぶん)ががんばるしかないと苦手(にがて)なことに取(と)り組(く)んだCさん

+

実(じつ)は算数(さんすう)がとても苦手(にがて)なCさん。グループのメンバーを見回(みまわ)すと、頼(たよ)りにしていた大人(おとな)たちは別(べつ)のこと(飲(の)み水(みず)とガス問題(もんだい))で必死(ひっし)になっている様子(ようす)。ここは自分(じぶん)ががんばるしかないと気(き)がついたCさんは、材料(ざいりょう)を計(はか)るために、苦手(にがて)な掛(か)け算(ざん)をがんばって取(と)り組(く)む様子(ようす)が見(み)られました。





実践(じっせん)者(しゃ)からひとこと

言語(げんご)だけを学(まな)ぶ目的(もくてき)で集(あつ)まると、母語(ぼご)話者(わしゃ)が優位(ゆうい)に立(た)ち、知識(ちしき)の押(お)し付(つ)けが起(お)きがちです。また、「さあ、おしゃべりをしましょう。」と言(い)われて集(あつ)まっても、何(なに)から話(はな)せばいいのか戸惑(とまど)ってしまうことがあります。教科書(きょうかしょ)の内容(ないよう)を覚(おぼ)えるだけでは、気持(きも)ちのやりとりは生(う)まれにくいと感(かん)じてきました。

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「うどん」は、インスタントならお湯(ゆ)を沸(わ)かして3分(ぷん)待(ま)てばできてしまいます。ですが、何(なん)時間(じかん)もかけて、ワイワイと、意味(いみ)のないこともあることも話(はな)しながら手作(てづく)りするうどんは、格別(かくべつ)な味(あじ)がしました。ひとつのものを作(つく)るために、他(ほか)の人(ひと)と協力(きょうりょく)する中(なか)で、イキイキとした「何(なに)か」が生(う)まれたように感(かん)じました。世代(せだい)を超(こ)えた仲間(なかま)と「うどんを作(つく)って食(た)べる」経験(けいけん)を通(とお)して日本語(にほんご)も学(まな)ぶことは、私自身(わたしじしん)の心(こころ)も豊(ゆた)かにしてくれました。

異(い)年齢(ねんれい)の多様(たよう)な人(ひと)たちが大人数(おおにんずう)で集(あつ)まれば、途中(とちゅう)で疲(つか)れたり、飽(あ)きたりすることもあります。そんなときは交代(こうたい)すればいいし、自分(じぶん)の悩(なや)みを相談(そうだん)することもできます。すべてのことに、がむしゃらに取(と)り組(く)むことだけがよいわけではありません。ラテンアメリカの「楽(たの)しんだもの勝(が)ち」のような空気感(くうきかん)もある日系社会(にっけいしゃかい)の中(なか)で、この「うどんを作(つく)って食(た)べる活動(かつどう)」は、とても有意義(ゆういぎ)なものだったと感(かん)じています。

それぞれの学(まな)びたいことややる気(き)に応(おう)じて、さまざまな学(まな)びが存在(そんざい)します。この活動(かつどう)では、貪欲(どんよく)に学(まな)びたいと思(おも)う学習者(がくしゅうしゃ)は、川柳(せんりゅう)やオノマトペに親(した)しみ、絵画(かいが)や書道(しょどう)に触(ふ)れ、表現(ひょうげん)し、アニメを見(み)て発話(はつわ)や背景(はいけい)などをまとめ、作文(さくぶん)を書(か)いたり、さらに調(しら)べ学習(がくしゅう)をして発信(はっしん)したりと、学(まな)びを広(ひろ)げていくこともできます。学(まな)びの無限(むげん)の可能性(かのうせい)を感(かん)じました。(実際(じっさい)はそこまでの学習者(がくしゅうしゃ)はいませんでしたが…。)

イベント「うどん会(かい)」では、自分(じぶん)たちが準備(じゅんび)したイベントに人(ひと)が集(つど)い、喜(よろこ)んでくれる姿(すがた)を見(み)ることで、じんわりと幸(しあわ)せな気持(きも)ちを味(あじ)わった人(ひと)もいました。社会(しゃかい)とのつながりを感(かん)じ、自分(じぶん)の存在価値(そんざいかち)を認(みと)め始(はじ)めた人(ひと)もいたかもしれません。自分(じぶん)の世界(せかい)が広(ひろ)がったと感(かん)じた人(ひと)もいたでしょう。

「日本語(にほんご)教育(きょういく)」にできることは、何(なん)なのでしょうか。
日本語(にほんご)の能力(のうりょく)だけを高(たか)めることを目指(めざ)すのではなく、一人(ひとり)ひとりの学(まな)びを尊重(そんちょう)し、人生(じんせい)を楽(たの)しむことができる社会(しゃかい)をつくることに、日本語(にほんご)教育(きょういく)はもっと貢献(こうけん)できるのではないか――私(わたし)は、そう考(かんが)えています。


この実践(じっせん)が生(う)まれた背景(はいけい)

世界最大(せかいさいだい)の日系社会(にっけいしゃかい)を有(ゆう)する多文化(たぶんか)・多民族(たみんぞく)・多言語(たげんご)移民国家(いみんこっか)ブラジルには、グローバルに活躍(かつやく)する日本人(にほんじん)・日系人(にっけいじん)も多数(たすう)いる一方(いっぽう)で、言語(げんご)選択(せんたく)やアイデンティティに悩(なや)む人(ひと)、ダブルリミテッド、就職難(しゅうしょくなん)などの問題(もんだい)も抱(かか)えている人(ひと)もいます。日本語(にほんご)学習(がくしゅう)のスタイルも非常(ひじょう)に多様(たよう)で、日本語(にほんご)を母語(ぼご)・継承(けいしょう)語(ご)・外国語(がいこくご)として学(まな)ぶ人々(ひとびと)が同(おな)じ場(ば)で一緒(いっしょ)に学習(がくしゅう)することも、決(けっ)して珍(めずら)しいことではありません。

ブラジル・サンパウロ州(しゅう)マイリポラン市(し)は、戦前(せんぜん)移民(いみん)の多(おお)い土地(とち)で、日本人会(にほんじんかい)設立(せつりつ)の歴史(れきし)が古(ふる)く、移民(いみん)世代(せだい)が進(すす)んだ地域(ちいき)です。そこに引(ひ)っ越(こ)した私(わたし)は、日本人会(にほんじんかい)の活動(かつどう)が活発(かっぱつ)でないことを知(し)り、とても残念(ざんねん)に感(かん)じました。そこで、当時(とうじ)の日本人会(にほんじんかい)会長(かいちょう)と話(はな)し合(あ)い、「日本語学校(にほんごがっこう)」を復活(ふっかつ)させることにしました。

教師(きょうし)は私(わたし)一人(ひとり)、大(おお)きな机(つくえ)と椅子(いす)、そしてホワイトボードがあるだけの状況(じょうきょう)でした。実際(じっさい)に始(はじ)めてみると、日本語(にほんご)学習(がくしゅう)に興味(きょうみ)をもつ人(ひと)が予想(よそう)以上(いじょう)に多(おお)いこと、また、年齢(ねんれい)やニーズの幅(はば)がとても広(ひろ)いことに気(き)づかされました。以前(いぜん)勤務(きんむ)していた日本語学校(にほんごがっこう)では、文化(ぶんか)体験(たいけん)授業(じゅぎょう)を全(ぜん)クラス合同(ごうどう)(異(い)年齢(ねんれい)・異(こと)なる言語(げんご)レベル)で行(おこな)っていたことや、生徒(せいと)が教師(きょうし)役(やく)を担(にな)うことで皆(みな)の力(ちから)が伸(の)びた経験(けいけん)がありました。そうした経験(けいけん)や、これまで触(ふ)れてきたさまざまな教育(きょういく)理論(りろん)、そして、日本人会(にほんじんかい)の活性化(かっせいか)という思(おも)いも重(かさ)なり、「マイリポラン同志会(どうしかい)日本語学校(にほんごがっこう)」を開校(かいこう)しました。

教師(きょうし)兼(けん)校長(こうちょう)として活動(かつどう)する中(なか)で、「忙(いそが)しい現代社会(げんだいしゃかい)では、時間短縮(じかんたんしゅく)や効率(こうりつ)、成果(せいか)ばかりが重視(じゅうし)され、人(ひと)として大切(たいせつ)なことを忘(わす)れてはいないだろうか」「漢字(かんじ)や語彙(ごい)をたくさん覚(おぼ)えることよりも、もっと大事(だいじ)なことがあるのではないか」そんな思(おも)いがわいてきました。

「ただいる」「しない」を許容(きょよう)する、ゆるく温(あたた)かい場所(ばしょ)での、心(こころ)やことばのやりとりこそが、継承(けいしょう)日本語(にほんご)教育(きょういく)の基本(きほん)なのではないか。そんな思(おも)いを大切(たいせつ)にしながら、日々(ひび)の活動(かつどう)を続(つづ)けています。

作成者(さくせいしゃ)

横溝(よこみぞ) みえ
マイリポラン同志会(どうしかい)日本語学校(にほんごがっこう) 教師(きょうし)兼(けん)校長(こうちょう)
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