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活動型3 世代を超えて皆が心地よい場を創る: 作ろUdon・食べよUdon
教師不足や、多様な学習者への対応に困っている方へ
世代を超えて一人ひとりが心地よく集える場を創ってみることを提案する教材

キーワード
#異年齢集団(幼児~90代まで)
#多様な学習者が関わり合う場
#おおらかにゆるやかに
#共に作り、共に食べる
#「食文化」する

教材1分紹介
「
日本につながる
人たちが、
自らを
肯定し、
幸せに
生きるために、
日本語教育のできることは
何だろう?」
実社会では、
世代も
年齢も
言語レベルも
認知能力もすべて
違う
人々が、
触れ
合って
共に
生きているのだから、「
日本語を
学ぶ
場」も、そうあっていいのではと
考え、
幼児から90
代までが
集う「
異年齢クラス」を
作りました。このクラスでは、
日本文化や
日本食に
親しみながら、
世代を
超えて
学習者が
学び
合い、
協働し、コミュニティや
地域とつながることで、「ほどよく
心地のいい
場」を
創ることを
目指し、
活動しています。
今回ご
紹介する「
作ろUdon・
食べよUdon」の
活動はその
一例です。
心も
体も
温まる「うどん」を、
作り
方から
調べ、
仲間とワイワイがやがや
手作りして、
地域のイベント「うどん
会」などで
一緒に
食べます。また、それぞれの
興味関心に
応じて、「うどん」に
関連した
書道や
絵画や
川柳などの
作品を
味わったり、
作ったりといった
自己表現活動を
行ったりもします。このような
経験は、
心も
体も
満たし、
幸せな
記憶として、
一人ひとりの
人生を
支える
糧となるのではないでしょうか。
この
実践では、
教師不足や、
複数レベルの
多様な
学習者への
対応に
困っている
方に、
世代を
超えて
一人ひとりが
心地よく
集える
場を
創ってみることを
提案します。
安価で
簡単安全な「うどん」を
共に
作って
食べる
活動が、
多様な
人が
関わり
合う
場づくりのヒントになればと
思います。
この教材の特徴は?
• 気軽におおらかに、ゆるく。多様な関わり方
うどん作りを通して、年齢や立場にかかわらず、それぞれが無理なく関われる「おおらかでゆるやかな場」を創っています。うどんは、材料が安価で入手しやすく、工程も簡単で危険が少ないため、年少者からご年配の方まで活動に参加できます。自分の得意なことをしたり、手伝ったり、手伝ってもらったりと、関わり方は人それぞれです。「今日は調子が出ない」という人は、見ているだけでも構いません。すべてを100%全力で行う必要はなく、自由さや、何もしない人も許容するゆるさを大切にしています。学習者、保護者、地域やコミュニティの人が、それぞれの関わり方で、気楽に継続的に集まることが、心のよりどころとなる場づくりにつながっています。
• 「うどん」を題材に、できることは無限
身近な「うどん」を題材にすることで、学びをさまざまな教科・表現活動へと広げることができます。「うどん」についてのインタビューなどの調べ学習を通して、グラフを作成したり、発表動画を作ったりできます。レシピを見て作り方を理解し、分量を計算できることも、立派な力です。さらに、栄養素の学習など食育につなげることもできます。「うどん」に関連したオノマトペや川柳、絵画や書道などを通して、体験したことを表現する文化的活動にも広げられます。特に、イベントで他者の目に触れる作品を作ることは、学習者のモチベーションを高めることにもつながります。
• 教師不足に対応できる
多様な学習者が同じ空間で学び合うため、教師一人でも無理のない運営が可能です。世代や日本語レベルの異なる学習者が同じ時間・同じ場所で活動するため、教師がレベル別に何時間も授業を行う必要がありません。学習者同士の関わりや協働そのものが学びとなり、教師は全体を見守る役割を担います。
どんな子ども?
| 年齢 |
4歳~90代成人(何歳でも) |
| 人数 |
10名程度(うどんを作るため、台所の広さにもよるが、何人でも可能) |
| 経験・知識 |
多様(特に問わない) |
| 日本語力の目安 |
A1レベルから、話す能力はC2レベルまで多様(特になし) |
目標は?
| 目的 |
日本文化や日本食に親しみながら、自分や他者の多様な考え方を知り、他者との協働や地域とのつながりを通して、主体的に学び、関わる力を育成する |
| 目標 |
- うどん作りや書道、絵画、川柳などの日本文化に親しむ
- 日本食について、調べ、実際に作り、食べ、片づけまでの一連の活動に主体的に取り組む
- 自分や家族の好き/苦手な食べ物や得意/不得意なことを知り、認め合う
- イベントの準備や運営に関わりながら、地域の人々との交流を通じて社会とのつながりを感じる
|
言語面の 目標 |
- 自分の興味関心のある語彙/表現を学ぶ
- 他人と意味のあるやりとりをする
- 「うどん会」での自分の学びや感想を話す/書く
- オノマトペと川柳・俳句を味わう/学ぶ
|
主な活動と時間のめやす
対面授業と、
家での
学習を
取り
入れて
行っています。
クラスの
実態や
様子に
応じて、さまざまな
活動の
組み
合わせが
可能です。
以下はその
一例です。
全4回(1回3時間程度)+家での学習
【家での学習】
• うどんを
食べた
経験についてアンケートを
行う。うどんの
材料や
作り
方について
調べる
【第1回】うどんを作る・食べる
•
事前に
調べたことをもとに、クラスで
協力してうどんを
作り、
一緒に
食べ、
片づけまで
行う
【第2回】ふり返り+イベント準備
• うどん
作りの
活動をふり
返る。イベント「うどん
会」に
向けた
準備を
行う
【第3回】イベント実施
• 「うどん
会」を
実施する。
地域の
人などを
招き、うどんを
作って
一緒に
食べる
【第4回】発展的表現活動
• うどんを
題材に、
日本文化(
書道、
絵、
川柳など)に
親しむ
※
所要時間はあくまで
目安です。
特に「イベント
実施」は、イベントの
規模によって
異なります。
教案では、この
例以外にも、
全6
回で
行う
実践例など、
実施のバリエーション
例を
紹介しています。
詳しいプランはこちら ■教案
子どもたちの学びの記録の残し方
• 今日のふり返り
日々の活動をふり返りながら、自分自身の小さな変化や気づきに目を向ける時間を大切にしています。自分で自分の変化や成長が認められるように、ふり返りシートに自由に、その日に何を学んだのか、今日の気づきなど何でもいいので記録しています。
• 成果物への自己評価
成果物への自己評価を通して、自分の良さに気づくことを大切にしています。書道や川柳などの表現活動の後には、自分の作品を自分なりの方法で評価するようにしています。評価の方法は、点数でも、絵文字マークでも、なんでも良いと考えています。また、点数の上限もありません。教師からは、自分のいいところに特に着目するように、自分に甘くするように、他人と比べる必要はないことを常に伝えるようにしています。こうした自己評価の記録は、教室のボードに掲示し、家族や周りの人にも、変化や成長が見てもらえるようにしています。
• トピックごとのまとめの動画
自分の学びを誰かに伝えてみることで、気づきが深まることがあります。ふり返りや自己評価、作品について話した内容を、短い動画として残すこともあります。顔は映さず、誰かに説明するような気持ちで話します。動画はグループ内で共有し、お互いの感じ方に触れるきっかけになっています。
こんな子どもの姿が見られました!
• 年下の学習者の世話を焼くようになったAさん
末っ子のAさんは、親や兄弟、従妹の中での年下で、みんなから世話を焼かれて、甘える姿が日常の姿。ですが、「うどん作り」では、いつもとは違う姿が見られました。「小麦粉に水を入れる」役を幼児にやってもらおうと考えたAさんは、まず、椅子を持ってきて、上に立たせました。水の入った容器を手渡して、その水をボールに入れるように伝えて、自分はニコニコとボールを支えていました。それができたら、きちんと「できたね!ありがとうね!」とほめることもできました。このように、小さい子どものできることを探して、優しくサポートをする姿を見ることができるのは、年齢差があるこの実践ならではの姿で、そんな姿を見たり、聞いたりする親の笑顔がまた、こちらを幸せな気持ちにさせてくれます。
• 普段したことのないことに挑戦するBさん
普段は、家でマッチで火をつけたことがなかったBさん。業務用の大きなガスコンロに火をつけるのは、強すぎる火力と、つけるときの大きな音のせいで、大人でも少し勇気のいる行為ですが、「やったことないけど、やってみたい」と言い、ワーワー言いながらも、恐々とマッチを擦り、思い切って手を近づけて火をつける様子が見られました。皆と一緒にいたらちょっと勇気がでて、やってみたことのないことに挑戦する姿、仲間ができるのだから、自分もできると思い、挑戦する姿はこの実践でよく見られる光景です。
• 自分ががんばるしかないと苦手なことに取り組んだCさん
実は算数がとても苦手なCさん。グループのメンバーを見回すと、頼りにしていた大人たちは別のこと(飲み水とガス問題)で必死になっている様子。ここは自分ががんばるしかないと気がついたCさんは、材料を計るために、苦手な掛け算をがんばって取り組む様子が見られました。
実践者からひとこと
言語だけを
学ぶ
目的で
集まると、
母語話者が
優位に
立ち、
知識の
押し
付けが
起きがちです。また、「さあ、おしゃべりをしましょう。」と
言われて
集まっても、
何から
話せばいいのか
戸惑ってしまうことがあります。
教科書の
内容を
覚えるだけでは、
気持ちのやりとりは
生まれにくいと
感じてきました。
「うどん」は、インスタントならお湯を沸かして3分待てばできてしまいます。ですが、何時間もかけて、ワイワイと、意味のないこともあることも話しながら手作りするうどんは、格別な味がしました。ひとつのものを作るために、他の人と協力する中で、イキイキとした「何か」が生まれたように感じました。世代を超えた仲間と「うどんを作って食べる」経験を通して日本語も学ぶことは、私自身の心も豊かにしてくれました。
異年齢の多様な人たちが大人数で集まれば、途中で疲れたり、飽きたりすることもあります。そんなときは交代すればいいし、自分の悩みを相談することもできます。すべてのことに、がむしゃらに取り組むことだけがよいわけではありません。ラテンアメリカの「楽しんだもの勝ち」のような空気感もある日系社会の中で、この「うどんを作って食べる活動」は、とても有意義なものだったと感じています。
それぞれの学びたいことややる気に応じて、さまざまな学びが存在します。この活動では、貪欲に学びたいと思う学習者は、川柳やオノマトペに親しみ、絵画や書道に触れ、表現し、アニメを見て発話や背景などをまとめ、作文を書いたり、さらに調べ学習をして発信したりと、学びを広げていくこともできます。学びの無限の可能性を感じました。(実際はそこまでの学習者はいませんでしたが…。)
イベント「うどん会」では、自分たちが準備したイベントに人が集い、喜んでくれる姿を見ることで、じんわりと幸せな気持ちを味わった人もいました。社会とのつながりを感じ、自分の存在価値を認め始めた人もいたかもしれません。自分の世界が広がったと感じた人もいたでしょう。
「日本語教育」にできることは、何なのでしょうか。
日本語の能力だけを高めることを目指すのではなく、一人ひとりの学びを尊重し、人生を楽しむことができる社会をつくることに、日本語教育はもっと貢献できるのではないか――私は、そう考えています。
教材ダウンロード
【教案・資料
】
※資料3、7、8は、現場に合わせて加工できるようにWordで提供しています。それ以外の資料はPDFファイルです。
この実践が生まれた背景
世界最大の日系社会を有する多文化・多民族・多言語移民国家ブラジルには、グローバルに活躍する日本人・日系人も多数いる一方で、言語選択やアイデンティティに悩む人、ダブルリミテッド、就職難などの問題も抱えている人もいます。日本語学習のスタイルも非常に多様で、日本語を母語・継承語・外国語として学ぶ人々が同じ場で一緒に学習することも、決して珍しいことではありません。
ブラジル・サンパウロ州マイリポラン市は、戦前移民の多い土地で、日本人会設立の歴史が古く、移民世代が進んだ地域です。そこに引っ越した私は、日本人会の活動が活発でないことを知り、とても残念に感じました。そこで、当時の日本人会会長と話し合い、「日本語学校」を復活させることにしました。
教師は私一人、大きな机と椅子、そしてホワイトボードがあるだけの状況でした。実際に始めてみると、日本語学習に興味をもつ人が予想以上に多いこと、また、年齢やニーズの幅がとても広いことに気づかされました。以前勤務していた日本語学校では、文化体験授業を全クラス合同(異年齢・異なる言語レベル)で行っていたことや、生徒が教師役を担うことで皆の力が伸びた経験がありました。そうした経験や、これまで触れてきたさまざまな教育理論、そして、日本人会の活性化という思いも重なり、「マイリポラン同志会日本語学校」を開校しました。
教師兼校長として活動する中で、「忙しい現代社会では、時間短縮や効率、成果ばかりが重視され、人として大切なことを忘れてはいないだろうか」「漢字や語彙をたくさん覚えることよりも、もっと大事なことがあるのではないか」そんな思いがわいてきました。
「ただいる」「しない」を許容する、ゆるく温かい場所での、心やことばのやりとりこそが、継承日本語教育の基本なのではないか。そんな思いを大切にしながら、日々の活動を続けています。
作成者
横溝 みえ
マイリポラン同志会日本語学校 教師兼校長