授業に役立つ教室活動のアイデアを提供しています。「読む」「聞く」「話す」「書く」「文化理解」など、初級から上級までのさまざまな活動を含んでいます。教室活動の手順や、そのまま使えるタスクシートがあります。「「教科書を作ろう」教室活動」、「季節の活動」、「JFS B2教材」、「Learn Japanese from the News ダイアローグ教材」、「JFKL Lesson IDEAS」、「ちえちゃんと出かけよう!」の6種類があります。
「教科書を作ろう」教室活動
学習者が日本語でコミュニケーションができるようになることを目指した、中等教育の学習者を対象とした161の教室活動です。「うち」→「学校」→「まち」→「わたしの国と日本」というように、学習者にとって身近なものから、テーマが少しずつ広がっていきます。各テーマには5つのブロックがあり、目標Can-doが設定されている活動もあります。
それぞれの活動には、手順、モデルテキスト、文法項目、語彙のほか、先生へのヒント(「先生へ」)がついています。モデルテキストはダウンロードでき、ワークシートとしてそのまま使えます。文法項目は、「「教科書を作ろう」文法解説」のそれぞれの箇所にリンクしており、解説を読むことができます。
■中等教育向け初級日本語素材集『教科書を作ろう』について
『教科書を作ろう』には、中等教育段階の学習者用の教科書・教材を作るときに参考となるように日本語の説明、例文をまとめた「せつめい編」と、練習をまとめた「れんしゅう編」があり、ここでは、「れんしゅう編」の161の教室活動を提供しています。
こちら
にも「教科書を作ろう」の説明があります。「せつめい編」「れんしゅう編」をまとめてダウンロードできます。
以下の10の活動には、その活動の到達目標となるJFCan-doを示しました。
Can-doと、その活用の方法については、こちらをご覧ください。
「教科書を作ろう」 |
JF Can-do |
レベル |
言語活動 |
カテゴリー |
Can-do |
1-1「聞いてください」 |
A1 |
受容 |
指示やアナウンスを聞く |
ゆっくりとはっきりと話されれば、「教科書を開いてください」「教科書を読んでください」などの授業中の教師のごく簡単な指示を聞いて、理解することができる。 |
3-4「ハンバーガーの店」 |
A1 |
やりとり |
店や公共機関でやりとりをする |
飲食店で、サンプルやメニューの写真を指差しながら、料理や飲み物を、「これをください」など簡単な言葉で注文することができる。 |
5-5「休みのこと」 |
A1 |
やりとり |
社交的なやりとりをする |
友人や近所の人に、休みの日にどこへ行ったかたずねたり、「楽しかったです」などの簡単な感想を交えながら、答えたりすることができる。 |
5-8「さそいましょう」 |
A2 |
やりとり |
インフォーマルな場面でやりとりをする |
友人を誘うために、イベントの日時を伝え、一緒に行くかどうか、短い簡単な言葉でたずねたり、誘いに答えたりすることができる。 |
6-2「わたしは先生です」 |
A1 |
受容 |
指示やアナウンスを聞く |
ゆっくりとはっきりと話されれば、「教科書を開いてください」「教科書を読んでください」などの授業中の教師のごく簡単な指示を聞いて、理解することができる。 |
A1 |
やりとり |
共同作業中にやりとりをする |
授業などで、教師として、「教科書を見てください」「答えを言ってください」など、生徒に簡単な指示をすることができる。 |
7-7「駅はどこですか」 |
A2 |
やりとり |
情報交換する |
道に迷ったとき、目的地への行き方について、短い簡単な言葉で人に質問したり、説明したりすることができる。 |
9-5「お大事に」 |
A1 |
受容 |
指示やアナウンスを聞く |
自分に向かってゆっくりとはっきりと話されれば、「よく休んでください」「薬を1日3回飲んでください」など、医者のごく簡単な指示を聞いて、理解することができる。 |
9-7「健康チェック」 |
A2 |
やりとり |
申請書類や伝言を書く |
自分の生活習慣に関する選択式などの簡単なアンケート調査の質問を理解し、答えを書くことができる。 |
17-6「仲間探し」 |
A2 |
やりとり |
インフォーマルな場面でやりとりをする |
友人を誘うために、イベントの日時を伝え、一緒に行くかどうか、短い簡単な言葉でたずねたり、誘いに答えたりすることができる。 |
19-5「お礼のカード」 |
A2 |
やりとり |
手紙やメールのやりとりをする |
お世話になった人に、短い簡単な文でお礼の手紙やメールなどを書くことができる。 |
監修 |
佐久間 勝彦(聖心女子大学教授) |
執筆 |
木山 登茂子、坪山 由美子、八田 直美、古川 嘉子、向井 園子(いずれも国際交流基金日本語国際センター専任講師)、 小松 知子(国際交流基金派遣専門家) (肩書きは当時) |
季節の活動
日本の季節や年中行事に合わせて行える111の教室活動を提供しています。1月は「正月」「成人の日」「雪」、2月は
「節分」「バレンタインデー」と、月ごとにいくつかのトピックがあります。初級から上級まで幅広いレベルの学習者を対象としています。ワークシートはワードファイルでダウンロードして、自由に編集できます。
執筆 |
津花 知子、赤澤 幸(国際交流基金日本語国際センター事業化開発チーム) 久保田 美子、中村 雅子、磯村 一弘、三原 龍志(いずれも国際交流基金日本語国際センター専任講師) (肩書きは当時) |
JFS B2教材
JF日本語教育スタンダード(JFS)の考え方にもとづいて開発されたB2(上級)レベルの教材です。
B2レベルとは、次のことができるレベルです。
JF日本語教育スタンダードとCan-doについて
・自分の専門分野に関して抽象的で複雑な内容でも理解できる
・母語話者と流暢にやりとりすることができる
・幅広い話題に対応できる
・自分の考えや視点を伝えることができる
また、B2レベルを目指す学習者は、学習目的やこれまでの学習経験が多様なため、個人あるいはクラスによってニーズが大きく異なります。このようなB2レベルの特性を踏まえ、この教材は次の点を重視しています。
(1) 課題遂行型の学習活動と汎用的な目標設定
具体的な場面や話題にもとづいた「目標Can-do」
を設定し、それを達成するための学習活動が組み立てられています。それと同時に、異なる場面や話題とも共通するB2レベルの「汎用的な目標」
を提示しています。それにより、ニーズが異なる学習者やクラスでも何を目標に学習すればよいのかを意識することができます。
(2) 多技能統合型の学習
読んだり聞いたりして理解したことを基に、話したり書いたりするという複数の技能を統合した内容で構成されています。それにより、私たちの実際の言語行動に近い学習を実現しています。
(3) 生素材の活用
テレビ番組や書籍などの生の素材を取り入れています。それと同様に、会議や会話の動画・音声は、出演者が教材と同じ設定の言語活動を台本なしで行ったものを収録しています。
(4) 言語項目(語彙・文法・表現など)の自律的な学習
学習すべき言語項目(語彙・文法・表現など)を明示していません。スクリプトやテキストの中から、自分に必要なもの・ことを自ら意識し、選んで学んでいきます。このような学習デザインによって、学習者が教室外でも自律的・継続的に学び続ける態度を育てます。
(5) 教材サンプルとしての学習デザインの提案
教材の冊子(PDF)を印刷すれば、そのまま授業用の教材として使うことができます。教え方は「教師用資料」のI~Ⅲを参考にしてください。この教材の学習デザインを参考にして、学習者やクラスのニーズにあったトピックや場面で学習活動を作ることも可能です。「教師用資料」のⅣ「解説」に、教材の開発意図や関連するCan-do、発展のアイデアなどをまとめていますので、参考にしてください。
「JFS B2教材」には、以下の4つのユニットがあります。
タイトル |
汎用的な目標  |
設定・話題 |
目標Can-do  |
中心となる技能 |
時間 |
①日本語で楽しもう! |
・テレビ番組や本などを娯楽として楽しむことができる ・いろいろな話題で雑談を続けることができる |
現代アート |
- (1)
- 芸術祭に関するテレビ番組を見て、そのイベントの概要だけでなく、作品にこめられた作家のメッセージや意図などを理解することができる。
- (2)
- 芸術分野の書籍を読み、筆者の視点や筆者が勧める鑑賞方法を理解することができる。
- (3)
- いっしょにアート作品などを見た後で、友人とその印象や感想などを積極的に話し、気持ちよく雑談を続けることができる。
|
(1)視聴 (2)読む (3)口頭でのやりとり |
120分 × 3回 |
②日本語で会議!? |
ある程度フォーマルな会議で、結論を出すための議論に積極的に参加できる |
スピーチコンテストの審査会議 |
スピーチ審査等のフォーマルな会議で、参加者同士で意見を調整しながら、結論を出すための議論ができる。 |
口頭でのやりとり |
120分 × 2~3回 |
③どうやって伝えよう? |
相手の状況や気持ちを配慮して言葉や表現を選んだり、伝え方を工夫したりすることができる |
ビジネスメール(伝えづらい内容のメール) |
仕事上で関係のある人に業務上の急な変更や無理なお願いなどを伝えるメールを、相手の状況や気持ちに配慮し、ことばや表現を選んだり伝え方を工夫したりして書くことができる。 |
文書でのやりとり |
120分 × 2~3回 |
④場に合った文章に挑戦! |
自分の見解を伝えるための文章を、目的や場面に合ったスタイルで書くことができる |
依頼原稿としての書評の執筆 |
自分の国の書籍を紹介するための500字程度の書評を、場に合ったスタイルの文章で書くことができる。 |
書く |
120分 × 2~3回 |
各ユニットでは以下のものを提供します。
|
教材 |
資料 |
冊子 (PDF) |
動画 |
音声 (聴解用) |
音声 (確認用) |
教師用資料 |
タスク解答例 |
スクリプト (音声・映像) |
①日本語で楽しもう! |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
②日本語で会議!? |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
③どうやって伝えよう? |
〇 |
― |
― |
〇 |
〇 |
〇 |
― |
④場に合った文章に挑戦! |
〇 |
― |
― |
〇 |
〇 |
〇 |
― |
▶
動画の
詳細について
こちら
執筆 |
大舩 ちさと、篠崎 摂子、清水 まさ子 |
<参考資料>
大舩 ちさと・篠崎 摂子・清水 まさ子(2017)「B2(上級)レベルの課題遂行をめざした教材開発-新たな教材像模索の試み-」『2017年度日本語教育学会秋季大会予稿集』pp.402-407日本語教育学会
大舩 ちさと (2018)「JFS B2教材を公開しました!」 『日本語教育通信 日本語教育ニュース』
篠崎 摂子・大舩ちさと (2019) 「B2とはどんなレベルか―教育実践に向けたCEFR B2 Can-doの質的分析―」 『第23回ヨーロッパ日本語教育シンポジウム報告・発表論文集』pp.375-385
JFKL Lesson IDEAS
中等教育段階の学習者を対象にJFKL(Japan Foundation、Kuala Lumpur 国際交流基金クアラルンプール日本文化センター)が作成した170の教室活動案です。活動は、「私」→「家族と友だち」→「学校」→「町とコミュニティー」「国」と、身近なものから少しずつテーマが広がっていきます。
マレーシアの中等学校のシラバス(2008年)にもとづいていますが、初級レベルの文法理解、日本語のコミュニケーション活動、文化理解の学習を目的にした活動は、各国の中等教育で幅広く利用できます。地名、人名、通貨単位などはマレーシアのものが中心です。必要に応じて変えて使ってください。ワークシートはダウンロードして、自由に編集できます。
執筆 |
伊藤 愛子、久木元 恵、坪山 由美子、レイン 幸代 (いずれも国際交流基金クアラルンプール日本文化センター派遣専門家) |
制作 スタッフ |
中尾 有岐、中野 友理 (いずれも国際交流基金クアラルンプール日本文化センター派遣専門家)
|
協力 |
Ang Chui Yean(Japanese Language Teacher, SMK Bukit Jambul) Boey Siew Inn(Japanese Language Teacher, SMK Tropicana) Margaret Anthoney(Japanese Language Teacher, SMK Bdr Baru Salak Tinggi, Sepang) Edward Lee(国際交流基金クアラルンプール日本文化センター職員) (肩書きは当時) |
ちえちゃんと出かけよう!
日本の大学生・ちえさんが、外国人の友だちといろいろな場所やイベントに出かけるという設定の、文化理解を目的とした教材です。全部で12の素材があります。
各素材には3つの会話と、日本の文化や習慣を紹介する情報シートがあります。興味のある話題の会話素材、情報シートだけを使うこともできます。練習問題やタスクなどはありません。目的や対象によって、いろいろな使い方ができます。
なお、「ちえちゃんと出かけよう!」は、2007年7月から2012年1月まで「さくら&むさし」の投稿として「みんなの広場」で連載していた教材です。そのため、教材内の情報が古い場合があります。
執筆・編集 |
赤澤 幸、高野 千恵子、磯村 一弘、三原 龍志、高 偉建、森本 由佳子、太田 しのぶ |
イラスト |
岡崎 久美 |