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活動型2 子どもと保護者が全員で創る:子どもの好きから始まる「わたしプロジェクト」
どんなテーマで活動を作ったらいいか悩んでいる実践者のみなさんに、
子どもから始めてみることを提案する教材

キーワード
#高学年部(11~15歳)
#保護者と子どもの持つ資源を活用
#保護者全員教師役
#テーマ型体験活動
#後行シラバス

教材1分紹介
わたしたちの
教室では、「
主体的にアイデンティティーを
形成し
社会との
関係性を
築いていけることばの
力」を
教室目標に、すべてのクラスで「テーマ
型体験活動」を
行っています。この
教室では、
教師や教師役の保護者に教育を任せきりにするのではなく、すべての保護者が個々の特性を活かし合いながら、子どもと一緒に活動を創っています。
今回実践をご
紹介する
高学年部は、11
歳から15
歳の
子どもがいるクラスで、
日本語力はばらばらです。
自我も
育つこの
年齢で、5
歳もの
年齢差があると、
興味関心も
様々です。
高学年部では、これまでも
子どもたちの
興味関心から「オリジナル
本作成」「チャリティーグッズ
作成販売」「
私のカフェ
実践」などの「テーマ
型体験活動」を
行ってきました。しかし、メンバーが
変われば
関心も
変わります。
子どもたちにとってどんなテーマがいいのか、
毎年とても
悩むところです。
そこで
悩んだ
末、
いっそ子どもたち一人ひとりのやりたいことを追求させてみたらどうかということになり
生まれたのが、
今回ご
紹介する「わたしプロジェクト」です。これまでも、
子ども
主体にテーマを
考えてきましたが、ここまで
子ども
自身の
選択に
任せた
実践は
初めてでした。
どんなテーマで
活動を
作ったらいいかと
悩んでいる
実践者のみなさんに、
子どもの
好きから
始めてみることを
提案する
教材です。
初めて
取り
組んだテーマでしたが、
思っていた以上に子どもたちの生き生きした姿が見られました。ただ、
結果を
意識した
担当者が
活動を
主導してしまったところもありました。
初めての
実践だからこその
振り
返りもそのまま
報告します。
実践をしていると、うまくいかなかったとがっかりすることも
時にはあると
思いますが、
自分ならどうするだろうと
考えながらお
読みください。
教師不足に
悩むみなさんにも、
親と
子がいれば、だれでもどこでもできる
実践として参考にしていただければと思います。
この教材の特徴は?
• 特別な知識やスキルは不要。子どもと保護者、それぞれが持つ資源を活かし合う
この実践は、子ども14名(11歳~15歳)と保護者9名(母親7名、父親2名)とが、それぞれ悩み、語り合いながら協働で創った実践です。子どもに関心があり、子どもと対話できる人なら誰でもできる実践です。 保護者の多様な言語・社会経験、子どもの多様な言語・学校経験を資源として全員で実践を創っています。
• 子どもの「好き」から始め、「個」から「社会」へ広がる展開
この実践は1 年かけて取り組みましたが、展開は大きく2つの段階があります。前期は、子ども自身が自分の「好き」を追求し、友だちと共有しながら自分の「好き」で他者と関わることを目指した「個のプロジェクト」で、個々のプロジェクトを企画、実施しました。後期は、その「個のプロジェクト」を生かし、「社会」とつながるためのプロジェクトを考え、実施することを目指しました。
• 子どもの実態に合わせて、シラバスを創っていく後行シラバス
事前に大人が設定した目標を達成するために行う活動ではありません。毎回活動が終わる度に、担当者(保護者)が活動をふり返り記録し、次の活動を考えます。どんな形の関わり方やプロジェクトが生まれるかは、活動開始段階ではわかりません。子どもの実態に合わせて活動を考えていく後行シラバスです。
• 幸せな記憶と体験の中でことばを学ぶ「テーマ型体験活動」
子どもの興味関心のあることは何かと考えテーマを立て、そのテーマを軸に体験を重ね、その体験の中でことばを学んでいきます。ことばの体験が幸せな記憶とともにあることを私たちは重要だと考えます。子どもそれぞれの得意言語を活かしつつ、担当者(保護者)は子どもの日本語への関心や態度に応じて、日本語の使用を励まし支援します。
どんな子ども?
| 年齢 |
11歳から15歳まで (→主体的に活動を考えられる年齢なら何歳でも) |
| 人数 |
14人 (→ 4人以上いるとやりやすい) |
| 経験・知識 |
特に必要な経験や知識はいらない 子どもたちのこれまで築いてきた経験と知識を活かしてできる活動 |
| 日本語力の目安 |
特にない。日本語力のレベルに関係なく活動できる |
目標は?
| 目的 |
主体的な活動や対話を通じて他者とつながりながら、自分と社会との関係に目を向ける |
| 目標 |
- 自分の「好き」なことを見つけ、活動(プロジェクト)を構想する
- 仲間や担当者との対話を通して、活動の内容を修正したり発展させたりする
- クラスメイトと「好き」を共有しながら、他者とのつながりや社会との関係を考える視点を持つ
|
言語面の 目標 |
- 自分の好きなことや、自分のプロジェクトでやりたいこと、プロジェクトの進捗状況などを伝え合うために自分に必要な言語の力(複数の言語を使いこなすストラテジーも含む)を各自がそれぞれ伸ばす
- 日本語を自分の言語資源の一つとして自信を持つ
|
主な活動と時間のめやす
1回90分、全16回(前期:9回、後期:7回)
● 前期(全9回) 【他者とつながるための「個のプロジェクト」】
①
好きなことマップ
作成 (90
分×3
回)
②
作品決めとスケジュール
作成(90
分×2
回)
③
作品作成 (90
分×2
回)
④
発表会準備(90
分×1
回)
⑤
発表会(90
分×1
回)
● 後期(全7回) 【「社会」とつながるためのプロジェクト】
①
交流プログラム
企画・
準備(90
分×4
回)
②
交流プログラム
実施(90
分×1
回)
③
交流プログラム
振り
返り(90
分×1
回)
④
交流プログラム
報告会(90
分×1
回)
前期の
詳しいプランはこちら
■教案①前期
※
実際の
実践では、
後期は7
回で
実施しましたが、
反省が
残りましたので、
全9回で実施するプラン(■教案②後期)

も
作成しました。
詳しい
反省は、
■資料_実践者エッセイ

をご
覧ください。
子どもたちの学びの記録の残し方
グループ活動時のワークシート (毎週の学びの記録)
子どもたちは毎回、グループ活動時に、ワークシートに考えたこと、やったこと、決めたことなどを書きます。それが子どもたち自身の学びの記録になります。また、毎回SNSのグループ内で、ワークシートと活動時の写真を共有し、どんなことをしたか、必ずクラス全員で共有できるようにしています。また、すべてのワークシートは、子どもたち一人ひとり冊子型ファイルに収めています。
学期末に学びの記録を公開・発表 (学期の学びの成果)
ファイルに収めた記録は、毎学期、学期終わりの発表会で公開しています。教室内の保護者や他のクラスの子どもたちから付箋紙にコメントを書いてもらい、それを他者からの評価として残しています。
担当者(保護者)による子どもの様子の観察記録
担当者(保護者)は、毎回活動終了後の活動記録の中に子どもの様子も記録しています。記録の観点は、子どもの参加の様子、日本語使用の状況と変化、クラスメイトや担当者との関わり方を中心に、子ども同士、子どもと担当者とのやり取りも含めています。その日のホワイトボードの記録、ワーク中に記入したワークシートなどもすべて写真に撮って記録します。
こんな子どもの姿が見られました!
- 前期発表会で一人ひとりが工夫を凝らして発表していた姿が印象的だった。自分の好きなことに時間を惜しまず自主的に取り組む様子が全員に見られた。(保護者A)
- これまで教室の活動にあまり積極的に参加していなかった子が、自分から進んで作品を作り、担当者にも積極的に話しかけるようになった。(保護者B)
- 後期交流会では「自分の説明をわかってもらって嬉しかった」「喜んでもらえたのがうれしかった」という子どもたちの声が多く聞かれた。(保護者C)
- 前期は自分の得意なことばでシートの書き込みをした子どもがほとんどで、発表も得意な言語でやったが、後期は担当者の「日本語で書いてみようか」「日本語で発表してみようか」の呼びかけにもいい反応が増え、最後の発表会では全員自主的に日本語で発表した。(保護者D)
- 個人から始まった活動だが「一緒にやることが楽しい」という意見が多く出てきた。これまで仲間とうまく関われなかった子どもが、来年の活動の希望にも「みんなでやれること」と答え、個人から始まったこの活動が仲間意識も育てていた。(保護者E)
前期発表会:ミニゴルフコースで遊び方を教えた
前期発表会:日本語手話とタイ語手話の違いを説明した
後期:交流会で言うことを一緒に考えた
後期交流会:子どもたちとPK合戦をした
実践者からひとこと
- 前期は個々人で違う活動なので、子どもたち同士のコミュニケーションが減らないか心配したが、自分の好きなものを自慢したり、一緒に遊んだり、趣味の似た同士で情報交換したり、むしろコミュニケーションが増えている。これは想定外のことで、素晴らしいと思った。(保護者F)
- これまで活動に積極的に参加してこなかった子どもが、「難しい!楽しい!(難しい方が楽しい)」と発言し、やりたいことを日本語で一生懸命伝えてくれる様子にこの活動のチカラを感じた。(保護者G)
- 前期は最後の発表会に来られなくても、家で作った作品を配る、作品の過程を見せるなどで個々人やり切った満足感があった。しかし、後期の交流プロジェクトは「交流」という最終目的に参加できなかった子どもにとっては喜びが見出しにくかった。チームでの活動に意義を感じ、喜びを感じるためには、プロジェクトを決める過程の共有と、活動を作る過程そのものに、個々人の「好き」を反映させ、交流プロジェクトへの主体的参加になる手立てが重要。(保護者H)
- 自分の「好き」から始まる活動は自分の知っている世界の範囲から出ないで終わる可能性がある。子どもの世界からさらに外の世界へと、関心の範囲を広げる取り組みが重要になるが、そこに担当者の関わりの必要性があるのではないか。そして、その点が子どもと担当者との協働のあり方としても課題になる点だと思う。(保護者K)
詳しくは、
■実践者エッセイ「はじめての試みを振り返って思うこと

をご
覧ください。
教材ダウンロード
【教案・資料(PDF)
】
【ワークシート(Word)
】
この実践が生まれた背景
実践は、その実践の場の目標とあり方の上に存在するものです。そこで、ここで報告する実践が、どんな場で、何を目指した実践なのかを簡単に紹介します。
継承語教育を問い直した「バイリンガルの子どものための日本語教室」(タイ)の歩み
■ 教室の始まり
この教室は親の有志によって1999年に創設され、隔週(土曜日)1時間半、年20回、年間たった30時間の活動の継承語教室です。親が日本語と日本文化を身につけさせたいと始めた活動ですが、子どもたちの言語・文化経験は実に多様で、日本語能力もばらばらでした。そのため、当時のクラス目標「ひらがなの習得」(低学年部)、「漢字かな交じり文が読める」(中学年部)など、言語の習得レベルを目標にしたクラスでは進級できない子どもがでてきてしまいました。また、子どもに日本語を頑張らせる親と、頑張らせることができない親という分断も生まれ、教室全体に一体感はありませんでした。そして、日本語が伸びない子どもを無意識に軽んじていたことを示す事件も起きてしまいました。それをきっかけに、この教室の親たちは、自分たちはどんな教室を目指すべきなのか、すべての子どもが幸せになるために必要なことはなんなのかと考え始めたのです。2008年のことです。
■ 私たちは何を目指すのか「捉えなおした目標」
国際結婚の子どもはタイではマイノリティです。でも、ハイブリディティである自分に自信を持って生きてほしい、それが話し合いの末に出してきた、親たちの一番の願いだったのです。日本語ができても「お前は日本人なのか?何人なのか?」と問われ「日本で生まれ育った子どもとは違う」と思い、思わされてしまう。そんな外からの枠づけに翻弄されずに自分を捉え、社会と関わっていくために必要なことばが、目指すべき「ことばの力」なのではないかと思い至ったのです。「漢字いくつ書けるとかじゃない」「混ざっている私が私」と言えること。そうやって子どもの将来像を描いたことで、この教室は教室の活動目標を「主体的にアイデンティティーを形成し社会との関係性を築いていけることばの力」と捉え直しました。以来この目標が実践の指針です。また、クラス別の目標も「互いの内面的な違い(考え方、気持ち)を知ることで相手に興味や関心をもち、尊重しながら関係性を築く。お互いの日本語能力に囚われず、長所に眼を向け、協力して活動する」(高学年部)と、子どもの成長の観点に立った目標に変化しました。そして、この目標に向かい学びを起こすために行きついた活動が「テーマ型体験活動」だったのです。
■ 幸福な記憶とともにある日本語経験
ことばの
体験が
幸せな
記憶とともにあることを
私たちは
重要だと
考えます。
年にたった20
回の
活動です。その
中で
日本語を
伸ばすことができなくても、
幸福な
記憶の
中に
日本語があれば、きっと
日本語は
子どもたちにとって
大切なことばとなり、
本人が
望んだ
時に
意識的な
学習も
起こると
思います。また、
保護者自身が
幸せであることは、
共に
活動する
子どもにとってもとても
重要なことです。「
親も
子も
一緒に
幸福な
記憶を
持てること」、それが
継承語教育の
場を、
保護者である
私たちがつくる
上で
最も
基盤に
持っている
思いです。
保護者が
実践を
創ることで、
教室と
家がつながり、
実践をみんなで
共有できるなど、
教師任せにしない
利点がたくさん
生まれます。この
教室についてもっと
詳しく
知りたい
方は、
『バンコク発!ことばと文化を育む継承日本語教育実践:親子でつくる「テーマ型体験活動」の教室から』(池上摩希子・深澤伸子 編著)
をご
覧ください。
作成者
深澤伸子(「バイリンガルの子どものための日本語教室」アドバイザー)
安藤浩/柳原麻衣/ニューマン杏菜/シリクルチャヤノント明希/高島佑子/龍田裕紀/
船川夏子/カムトーンキッティクン佳澄(2024年度高学年部担当者)